小川榮太郎の書斎から コンサート評論
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榮チャンネル 第33回【2016年予定のダニエル・バレンボイム来日公演】

長らく来日しなかつたバレンボイムが来年1月から2月に来日する事が決定しました。現在、世界最高の巨匠と言つていいでせう。今回の来日ではブルックルナーの交響曲全曲演奏会とモーツァルトの後期ピアノ協奏曲の弾き振りを組み合わせた野心的なものです。ブルックナーを短期間に1番から9番まで演奏するといふのは空前の試みではないでせうか。

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ドゥダメル指揮ロスフィルのマーラーの第6

 原稿が厳しい状況だが、昨晩はドゥダメル指揮ロスフィルのマーラーの第6を聴きに出かけた。34歳、素晴らしい指揮者だし、息切れ、破綻なく大きくこの曲を構築して見事だが、出世が早過ぎて、自分の音楽、自分の音を少し見失つてゐるのではないか。去年ウィーンフィルを振つた時はオケに合はせて大人しくしてゐるのかと思つたが、さうではないやうだ。ベルリンフィルの次期音楽監督との噂もあるが時期尚早だらう。まあ、ベルリンフィルなんてオケは、チェリビダッケを選ばずカラヤンを、マゼールを選ばずアバドを、バレンボイムを選ばずラトルを選んだやうなオケだから、期待はしてゐないが。しかしもし、ベルリンフィルがティーレマンを選んだら、ベルリンの楽壇は、国立オペラがバレンボイム、フィルハーモニーカーがティーレマン、途轍もない緊張と論争の日々が幕開けするだらう。ティーレマンのレパートリーが狭いといふ事を問題にする人がゐるが、ドイツ語圏の大作曲家を彼くらゐきちんとやれる人がベルリンフィルの指揮者になる事に何の不足があるのか。頭が少しをかしいのではないか。マーラー、ドビュッシー、ストラヴィンスキー、ショスタコが振れないとねえ……。何言つてやがる、いつからベルリンフィルはそんなオケになつたのか。本務を忘れるな。
……それにしても、マーラーの第六は私には鬼門だな。数年前アバドがルツェルン管と来た時に、やはりこの曲だつた。史上空前といふ程なめらかで緻密でべらぼうに上手なアンサンブルだが、私にはこんなのは音楽ではないと叫びたくなるやうな強烈な違和感が生じた。憤慨の余り、席を蹴つて会場を後にしたものだ。アバドは私には全く苦手な人だつたが、どうやら彼のせゐよりもマーラーの第六といふ曲が僕に駄目なのかと、今回気付いた。この曲の極端に大袈裟な身振り。最後にゆく程に嘘臭くなる。ハンマーで床をぶつたたくのを見てゐると、この俺の頭を叩き潰したらどうだと喚きたくなる。音楽をやるなら音楽の領分にとどまつてほしいし、音楽を超えた音楽を目指すならば、マーラーはもつと内なる声との対話を大切にすべきだつた。才能以上の仕事をやらうとするとかういふ駄作が生れる。しかもそんなものを後生大事にレパートリーにして有難がつてゐる現代の阿呆な管弦楽団と聴衆。(勿論、第九でマーラーが、彼にしか達成できなかつた特別な音楽に到達した事は私も認める。いや、他にもマーラーに素晴らしいページが沢山あるのは言ふまでもない。今は毒づきたいから毒づいてゐるのだ。)
一昨日はモーツァルト、昨日はシェーンベルク、今日はマーラー、明日はバッハ……。まあ僕だつてさういふ音楽消費者の一人だが、この曲は、その極度の不毛さとありがた屋たちの馬鹿げたブラヴォーの御蔭で、音楽を消費する事のおぞましさに私を気付かせてくれる訳だ、五年に一度、名声の頂点にある指揮者のコンサートを通して。
それに引き換へ、先日の、ペーター=ツィマーマンの弾いたシベリウスのヴァイオリンコンチェルト。あれこそは全てにおいて本物の音楽だつた。作者もヴァイオリニストも。


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小川榮太郎

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